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第35回大会 準備委員長 今田 雄三(嗚門教育大学) |
このたび、日本箱庭療法学会第35回大会を2022年10月15日、16日に鳴門教育大学(徳島県鳴門市)およびZoomによるハイブリッド方式で開催の運びとなりました。ICTの発展に伴うSNSの普及、AIの実用化などにより私たちの生活や体験のあり様が大きく変化し、さらにコロナ禍で加速した感があります。変化の渦中にあって、何がリアルで何がリアルでないかといった基準も大きく揺らいでいます。そこで、今回の大会テーマは「箱庭のリアリティー空間・体験・こころ―」としました。砂箱の中にミニチュアを使って表現される「箱庭」の世界は、現実には存在しないという意味ではリアルな世界ではありませんが、心理的には非常にリアルな世界です。また、見守り手の存在や、目の前にあって触れることのできる砂箱、砂、ミニチュア、それらとの間で生じる体験も非常にリアルなものです。ですが箱庭やそれをめぐる体験の持つ意味合いも変わりつつあるかもしれません。こうした切り口から箱庭の本質や今日的な意味を再考する機会になればと思います。
初日のシンポジウムは『私たちにとって「リアリティ」とは何か?―空間・体験・こころからみる深層と真相―』と題し、「水族館の文化史―ひと・動物・モノがおりなす魔術的世界」でサントリー学芸賞を受賞された関西大学文学部教授の溝井裕一先生と、陶板で西洋名画を原寸大に再現する特殊な技術を用い、特にシスティーナ礼拝堂の天井画・壁画を空間ごとそのまま再現した環境展示というユニークなコンセプトで知られる、地元鳴門市の大塚国際美術館学芸員の富澤京子氏より基調講演を行って頂きます。さらに当学会の桑原知子先生と猪股剛先生による指定討論を通して、私たちのリアリティが再構築されるような、刺激的な体験がもたらされることが期待されます。
さらに初日の午前中には、12名の講師によるワークショップも開催されます。いずれのコースも、箱庭療法を中心とした臨床実践に関わる多様で大変興味深いテーマが設定されておりますので是非受講して頂ければと思います。
なお本大会では懇親会は行いませんが、新たな試みとして当日対面の会場において「交流会」を企画しています。対面参加には対面ならではの良さがあり、オンライン参加にはその利便性など大きな可能性をもたらしてくれるように思います。願わくば、対面とオンラインが両輪となり、これからの本学会の活動がさらに飛躍していく、新たな一歩につながることを祈念しております。
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